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#競歩 第107回日本選手権35㎞競歩、男女ともに日本記録更新! レースを解説します

第107回日本選手権35km競歩が開催されました。
やや肌寒い中、時折小雨も降り、強風も吹く中で、
男女ともに日本記録という素晴らしい結果でした!
それぞれレースを解説したいと思います。

男子35km競歩
予想通り4名の選手が飛び出しました。その4名とは
元50km競歩日本記録保持者で世界陸上ドーハ・オレゴンの代表野田明宏選手(自衛隊体育学校)、
東京五輪50km競歩6位で世界陸上オレゴン大会35km競歩銀メダルの川野将虎選手、
東京五輪代表で世界陸上ロンドン大会5位丸尾知司選手、
リオ五輪20km競歩7位入賞で世界陸上オレゴン大会代表松永大介選手。
一人一人の実績を読むだけでも、
高い実績を持った選手達の熾烈な争いが展開されるのが予想されると思います。

4人の集団で、アドバンテージがあるのは川野選手。
川野選手は世界陸上オレゴン大会で銀メダル獲得しているので、
35km競歩参加標準記録2時間29分40秒を切れば今年の世界陸上ブダペスト内定します。
無理に勝ちに行くレースをしなくて良いというのは「リスク」を背負う必要が少なく、
相手を見ながらレースが出来ます。
実際に集団でも前に出ることは無く、
集団の後ろに着くことが多く、冷静に様子を見るレースをしていました

内定を今大会で勝ち取るために川野選手以外の野田−丸尾−松永選手は、
前に出てレースを作ります

自分のペースでレースを作ることが得意の松永選手は、
集団から離れる前へ出て集団を離す、
と集団を軸にして自分のレースを作ろうとしてましたが、
なかなか作り切れず苦しんでる様子でした。

そんな中で、2021年東京五輪代表選考会となった大会で凌ぎを削った
野田−丸尾選手は、集団の中で冷静にレースを作っているのが印象的でした。

2021年の東京五輪代表選考会では、この二人の競り合いは圧巻でした
途中野田選手が丸尾選手を突き放したものの、
最後に丸尾選手が逆転し東京五輪代表を射止めました。
個人的には男子競歩で歴代ベスト1の素晴らしいレースでした

50㎞競歩代表 丸尾選手3人目決定!タイムには見えない僅差を制し、強いものが勝ったレース

この激闘の記憶は当然二人の選手にはあったと思います。

松本選手が途中棄権し、3名となったレース、
27kmで野田選手が仕掛けると丸尾−川野選手が着いていけません。
野田選手が4分/kmでじわじわと二人を離し始めます。

世界陸上ブダペストの代表を獲るためには、
川野選手に負ける訳にいかない丸尾選手は必死で野田選手を追いかけます。
川野選手もこの35kmで世界陸上銀メダリストとしての意地もあるでしょうが、
「代表獲得条件」が川野選手よりも厳しい丸尾選手が川野選手を置いていきます。
この心理的な部分は多少なりとも影響はしたと思います

野田選手もリードは着実に広げてはいるものの
2021年に逆転負けを喫しているだけに最後の最後まで気が抜けなかったでしょう。

それが「日本記録更新」という結果に繋がったと思います。

予想通りの4選手が素晴らしいレースをしました。

女子35km競歩
20km競歩で日本記録保持者で世界陸上ドーハ7位入賞という
圧倒的な実績を持つ岡田久美子選手(富士通)が35kmへの初挑戦

それを「迎え撃つ」のが女子35km競歩日本記録保持者で
初出場の世界陸上オレゴン大会女子35km競歩で9位とあと少しで入賞という園田世玲奈選手(NTN)

スタートして男子同様に実力で抜きん出る二人だけのレースになりました。

園田選手にとっては35kmで同じペースで歩く女子選手がいるという国内で初めての展開。
こういうマッチレースは藤井選手と幾度も経験している岡田選手。
これは双方にとってWINWINな、いわゆる「嚙み合わせの良い」展開が予想できました

レース自体は実績に勝る岡田選手がやや前に出るも「並ぶようにして歩く園田選手」
通常、真後ろに着いて相手に引っ張らせる、がセオリーですが、
真後ろに着かないことに園田選手の「意地」のようなものを感じました。

そして、岡田選手の身体が「35km使用」になりしっかり絞れており、
「細い」では無く「筋肉質で引き締まる」という身体になっていたのも
この距離への準備が出来ていたと感じました

二人のマッチレースが続きますが、園田選手の相手はスピードがある岡田選手。
ラスト勝負に持ち込まれては園田選手の「勝てる確率」が少なくなってしまいます
32-33km辺りで園田選手が仕掛けて前にでます。

30kmを越えてスピードアップは園田選手にとっても苦しいレースですが、
初35kの岡田選手も園田選手が早めに仕掛けてくるのは想定はしていたでしょう。
そして、20㎞以上の距離を歩いて突き放せるスピードがどこまで出せるか?
岡田選手にも不安は合ったと思います。

冷静に後ろに着き、スパートのタイミングを探ります。
この編の二人の凌ぎ合いは、噛み合うレースだからこそなので
二人とも「かっこよかった」です
思わず「かっこいい!」と口にしながら観戦してました(笑)

素晴らしいタイミングで園田選手を抜き日本記録を更新して
岡田選手が勝ち切りました。
園田選手も自身の持つ35kmの記録は更新したのは素晴らしかったです
岡田選手が参戦しても勝つ練習を積んできたからこそでしょう。

二人の差を生んだのは「フォーム」にあると思っています。

岡田選手は、スタートしてからゴールまで終始フォームが
大きく崩れることはありませんでした。
園田選手は、岡田選手を離そうと前に出る、離されて追いかける、
でフォームが崩れて腰が大きく引けてしまってました。
ピッチは上がってましたが、
足の出るポイントが腰が引けて後ろに下がってしまっているので
ピッチほどスピードが上がりませんでした。
世界陸上でも入賞争いをしてたときも同じようなフォームになっていましたので、
ここが園田選手の「伸び代」と感じています。

実は別に「かっこいい!」と思わず漏らしたのが、
女子35km競歩にオープン参加した競歩の世界女王の中国の劉虹選手
途中で転倒があったにも関わらず、自己の持つアジア記録を更新する2時間38分42秒
肘をやや広げて腕を振り、それが「左右の振り子」のように振りリズムを作りますが、
普通奈ら軸がブレますが、強靭な体幹が推進力に変えてくれてます。
思わず「かっこいい!」と言ってしまうフォームです。
劉虹選手にしか出来ないのではないかと思う、カッコいいフォームでした

男女ともに日本記録という素晴らしい結果でしたが
課題改めて浮き彫りになりました。

レース展開が予想通り、つまりトップ争いをする選手が限られてしまい
日本代表クラスとそれに続く選手との差が、大きいということでしょう
特に女子選手に関しては、3位の渕瀬選手とは13分40秒差
しかも渕瀬選手は2012年ロンドン五輪20㎞女子競歩のベテラン選手
若手は河添選手と岡田選手は15分以上の差があります。

男女混合競歩が開催が予定される中で、どう女子選手を強化していくか?
日本競歩の大きな課題になりそうです。

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